路線と運用

 皆さんから寄せられたアイデアは「懐具合のさびしい若者の旅を応援する列車」と「日本を縦断する豪華寝台」の2つに大別できそうです。

「次世代にも鉄道旅行の楽しさを知ってもらいたい」という願いは、夜行列車や寝台車の経験者の多くが、いくばくかのノスタルジーとともに持っていることでしょう。「若い頃の旅はかけがえのない経験」とは、誰もが認めるところですし、鉄道文化の継承という面も主張したいところです。
 ただ、そうした旅行をする若者が減ったことは事実。(若者に限りませんが)需要の減少が寝台列車や夜行列車の退潮の理由でした。

 一方、カシオペアやトワイライトエクスプレスのような豪華寝台列車は、予約困難なプラチナチケットであることも事実。日本を縦断するような長距離路線の提案も多く寄せられました。

 さらに、これまでの寝台列車とは違いますが「移動は日中、夜は温泉の駅に停車して温泉三昧。地元の美味しい食事に舌鼓を打って、停車中の列車で安眠。朝また移動」というするツアー列車もあります。楽しそうで、また現実的です。
 こうした形式で北海道や九州の観光地を巡る寝台車の旅、魅力的ですよね。

 近日中に水戸岡さんと、こうしたコンセプトの練り込みをする予定です。その様子をまたアップしたいと思います。

追跡人

旅は道連れ

 ノスタルジーをもって語られることも多い寝台列車。寝台にもぐりこむ前、隣り合った人たちと、挨拶程度の会話がかわされていました。
「学生さんですか?」
「ええ、1年ぶりに帰省するんです」
「ご両親も喜ばれたでしょう。冷凍ミカン、食べますか?」
「すみません。ありがとうございます」
 車内では自然に会話も生まれ、旅の情報などの交換も日常的な光景でした。一人旅であっても、誰とも口をきかない旅ではありません。自分の住む街を出て、見知らぬ人と会話をすること自体が若者の必修科目のようでもありました。

 と、古き良き時代を振りかえりつつも、そのエッセンスを現代や未来にどう伝えていくかが問題です。
 たとえばB寝台ではカーテンでプライバシーと公を隔てられていますから、そこには常識的なルールがあり、マナーが求められます。
 通勤電車で化粧する女性が話題になったのは数年前ですが、プライバシーと公共の場の概念も溶解してしまったフシもある現代、「ハコ」だけを復活させても、うまくなさそうです。

「子供づれで乗ることもあるので小さな子供が喜ぶ何かがほしいです」
「気心知れた人と語らいのひと時を過ごす、囲碁サロンカー、歌声喫茶ルームなど過ぎる時間を忘れ、終点に到着するのがもったいない列車」
 という声もあったように、家族連れやグループでの旅行も大きな要素ですから、見落とすわけにはいきません。そのための設備や運用の方法も整理・検討を加えていく必要がありますね。

追跡人



「夢」の背景に何がある?

 リアリティのあるアイデアの一方で、「あったら楽しいだろうな」という夢にあふれたアイデアも寄せていただきました。

「結婚式が出来る教会がセットになっていて、そのまま新婚旅行にいける夜行列車」
「仮装舞踏会列車(乗客はみんな仮装して旅する。秋葉風でもいいかも)」
「ケーキで出来てる列車(お菓子の家みたい)」
 など、空想の世界を走る寝台列車のようですが、その「夢」に象徴される、寝台列車の旅とはどんな特徴があるのでしょうか。

・夜を走りぬけて、翌日は別の遠くの街にいる非日常性。
・乗り合わせた人と触れあう機会がある。ありそう。

 この2点に集約されるように思います。
 どんな旅も「非日常」ではありますが、とりわけ夜行はその非日常感を増幅してくれる乗り物ですよね。

 かつては「A地点からB地点への単純な移動」という機能が優先された夜行ですが、「いつもいつも通る夜汽車……」で始まる唱歌『夜汽車』に描かれているような、心にしみいる「何か」があります。まして現代(そしてこれから)は、その「何か」が求められているのでしょう。

「寝巻き姿、眠い目をこすってぼんやりと夜明け前の車窓を見る贅沢…。新幹線にも夜行バスにも航空機にもありません」というご意見もありました。今、寝台列車だから体験できる感覚があるはずです。

 先に挙げた「非日常性」と「人とのふれあい」は、その「何か」の有力候補だと思われます。

 旅=非日常であるとして、人とのふれあいを象徴するが温泉でしょう。お湯につかってゆっくりと寛ぎ、見ず知らずのお客とも一言、二言、言葉を交わすことが当たり前のように行われています。
 大浴場にまつわるアイデアや要望が多かったのも、関連ありそうです。

「展望風呂は総ガラス張りの『風呂車』を」
「フットバスエステがあって、一日がんばった足をほぐしてくれる」
「展望風呂は絶対欲しい!」
 ほかたくさんの声が寄せられました。
「水が揺れると脱線するおそれもあるので大浴場は難しい」という意見に「砂風呂では?」「沿線の温泉のお湯で足湯は?」と盛り上がったのは、大コンセプトに結びつくような本質を突いているように思うのですが……。

追跡人


箇条書き第4弾

 とはいえ箇条書きにまとめてみると、今回の掲載分は少なかったですね。夜行新幹線にまつわるアイデア・ご意見をどう取り上げようかと思ったのですが、下記のような一文に集約させていただきました。


・昼行列車への連結も検討すべき。グリーン車のさらに上のサービスとして

・ヨーロッパの列車を参考に、発車の2時間前から乗車できるとか、個室寝台にはシャワー、トイレ、洗面台、シャンプー、石鹸、タオル付とか、ウエルカムドリンク&フルーツ付などなど

・「走るカプセルホテル」というのはどうでしょうか?

・料金もカプセルホテル並みにして、テレビ、電源、無線LANなどインターネット環境を充実させる手も

・夜行新幹線など、夜行の高速鉄道にもニーズがあるのでは?


 さて、このあと内容やテーマ別に分類する作業になります(すでに始めていますが)。
「鉄道とはどんな役割なのか」「寝台車には何を乗客にもたらすのか」といった大コンセプトと、具体的な設備や路線などの希望、方法論を大別する方向で進めています。
 この分類、かなり恣意的な(要するに独断と偏見で?)作業になってしまうかと思いますが、次回、アップする予定です。さてさて。
追跡人

箇条書き第3弾

 アップが遅れてすみません。読者参加ページに寄せられたアイデア、まだまだ続きます(未分類)

・小動物を中心にした動物園、水族館、前面全面がガラス張りの展望風呂などをつけてはどうでしょう

・展望風呂は絶対欲しい!

・水が揺れるために大浴場が難しいのなら砂風呂では?

・沿線の温泉のお湯で足湯にしては?

・新しい個室「和室寝台」があってもいいと思います

・「和室寝台」の運転区間は奈良始発、京都経由で太宰府天満宮のある博多を希望

・285系車両をベースにした、3M5T(動力車3両、動力を持たない車両5両)の編成が現実的

・大阪発→舞浜(ディズニーランド)間や、東京発→ユニバーサルシティー(USJ)など、開園時間の一時間ほど前に到着するダイヤで春休み、夏休み、ゴールデンウイーク、冬休みなどに運転するのはどうでしょうか?

・各テーマパークとタイアップして車内を装飾、できたらグッズの車内販売なんかも

・車内で入場券を発売、それを持っている人は専用ゲートを通って並ぶことなく入場も

・寝台列車は、面識ない人とのコミュニケーションが取れる。カーテンの陰で着替えができるのもメリット

・私鉄経由の路線も検討しては。近鉄・吉野行きや富山地鉄・宇奈月温泉行きなど

・4月8日、「寝台車の日」の制定を望みたい(1900年4月8日、山陽鉄道(現JR西日本山陽線)で急行列車に日本初の寝台車が連結されました)。

箇条書き第2弾

読者参加ページに寄せられたアイデアの続きです(未分類)。だんだん現実的な意見が多くなってきましたが、コンセプトへのヒントになりそうなアイデアを中心にまとめました。編成案や実現に向けての運用、技術についてのアイデア・ご意見は、また別の機会に。


・共同大浴場・展望風呂は総ガラス張りの「風呂車」を

・S和個室=内風呂・トイレ付き・部屋食、A和個室=トイレ付き・部屋食

・S個室=シャワー・トイレ付き、A個室=シャワー付き、B個室=供用シャワー付き

・18きっぷ+指定特急券+寝台券。お金のない学生たちがリーズナブルで楽しい寝台特急の旅ができる節約プラン

・シークレットゲストが乗り込んで「食堂車ライブ」などのサプライズを敢行

・修学旅行生と団塊の世代が乗り合わせても交流できるような列車に

・通過する風土の文化や歴史などを感じれられるようにしてほしい。

・その地域や風土に特有の食べ物や伝統工芸品を販売

・列車の一室で、その土地の伝統と触れ合えるようちょっとした講座を開いてみる

・その土地の文化や歴史に詳しいガイドが添乗して解説

・最後尾の車両は全世代が楽しめるように、昼は展望車、夜はバーというように時間帯で分けてみてはどうですか?

・子守唄としてはタタタン・タタタンという3拍子が心地よいので、「3軸ボギー車」も欲しい

・夜間走行中に通り過ぎる夜景を見ながらバーで一杯

・寝巻き姿、眠い目をこすってぼんやりと夜明け前の車窓を見る贅沢…。新幹線にも夜行バスにも航空機にもありません

・移動は日中、夜は温泉の駅に停車して温泉三昧。地元の美味しい食事に舌鼓を打って、停車中の列車で安眠。朝また移動するツアー列車

・日本縦断列車。停車駅は博多・小倉・下関・福山・広島・岡山・姫路・神戸・大阪・新大阪・京都・大垣・名古屋・静岡・熱海・横浜・渋谷・新宿・大宮・高崎・前橋・越後湯沢・長岡・新津・村上・酒田・秋田・弘前・青森・函館・長万部・東室蘭・登別・苫小牧・千歳・札幌

・稚内〜鹿児島中央を、日本海ルートや太平洋ルート、山陰ルートや山陽ルート、大分ルートや熊本ルートなどで結ぶ

・新幹線より安い「快速+ごろんとシート」。毛布が常備してあれば完璧

・前5両は「銀河」のような実用性重視、後ろ7両は展望席も設けた「カシオペア」のような快適性重視の「ビジネス+プレミアム」列車

・部屋の名前を「ゆふいんの森」「かもめ」「しおかぜ」など過去や現代の特急・寝台特急名にしてみては

・往年の列車名「燕」「櫻」「富士」「日南」「平和」などを部屋の名前にするのも

・観光用だけど実用的に使うことができる列車。夜を有効活用できる夜行列車こそ、実用性も考えた方がいいのではないでしょうか

・蒸気機関車が牽引する短い区間の寝台列車も

追跡人

箇条書き第1弾

読者参加ページに寄せられたアイデアを箇条書きにしていきます(未分類)。
大きなコンセプトを導き出すために、相反する意見、アイデアもそのまま提示しています。多数決で決まるわけではありませんが、新しい寝台車の方向性が見えてきそうです。


・結婚式が出来る教会がセットになっていて、そのまま新婚旅行に行ける夜行列車

・天井から星が見られるシースルー列車

・プールシースルー列車(泳ぎながらガラス越しに外を見ると水族館の魚の気持ちがわかるかも?)

・車両が全部お花で作られているお花列車

・仮装舞踏会列車(乗客はみんな仮装して旅する。秋葉風でもいいかも)

・ケーキで出来てる列車(お菓子の家みたい)

・エステカーでは、フットバスエステがあって、一日がんばった足をほぐしてくれる

・新規参入の「JR夜行」という新会社を立ち上げてはどうだろうか

・サービスクルーはちょっと多めに乗せてあげてほしいものです

・旧型客車のイメージを最大限残しながら、現代の技術と融合した旅心なデザイン

・日本を縦断する夢のような豪華寝台車

・天井まで回りこんだパノラミックウインドゥで山と空を楽しめる

・非日常的な列車なので、非日常的な運転を

・始発駅発車は16時〜19時、発車後1〜2時間で夕食

・シャワーは必須

・個室が基本ですが開放式があったほうが「旅」「非日常」感がある。スリ対策にコインロッカーがあると安心

・発車時刻を遅くして欲しい。0時頃発車、到着を8時頃に

・座席車も連結

・各地の観光地へと夜は走るホテル。到着駅では1日停車し、お客は観光を楽しんで夜はまた次の観光地へ

・子供づれで乗ることもあるので小さな子供が喜ぶ何かがほしいです

・気心知れた人と語らいのひと時を過ごす、囲碁サロンカー、歌声喫茶ルームなど過ぎる時間を忘れ、終点に到着するのがもったいない列車

・車椅子でも利用可、点字案内などバリアフリーで障害者の方も利用できるように

・寝台列車を新幹線で。たとえば新函館発鹿児島中央行きの寝台列車

・2階は客室、1階はすべて通路とし、公園のベンチのようにゆっくり座って移り行く景色を大きな窓からゆったりと眺められる列車

追跡人


たいへん長らくお待たせしました

 たくさんの熱意あふれるご意見、斬新なアイデアを寄せていただき、ありがとうございます。過日、水戸岡さんとプロジェクトの進め方を相談しました。みなさんの声を反映しつつ「新しい寝台列車」を創出するために、まずコンセプトを練り込むところから始めます。
 具体的には、本ブログを以下のような手順で進めていきます。

1 アイデアの採集・列記
「こんな寝台列車があったらいいなあ」「この設備がかかせない」など、すでに掲示板に多数のアイデアが寄せられていますが、これを内容やテーマ別に、箇条書きにしてまとめていきます。6月中〜下旬ごろまで、毎週1回・金曜日の更新予定です。

2 コンセプト練り込み
 アイデアをコンセプトへと昇華させていくプロセスです。プロジェクトの質や成否はココをしっかりと固めておくことで決まってきます。
「100ある言葉を2行で書いたらキャッチコピーが出てきます。鉄道文化をこれからも守っていくために何をするのかという志、高い視点からのコンセプトが大切です」(水戸岡さん)。

3 水戸岡プラン提示
上記の大コンセプトを元に具体化していきます。車両のデザインはもちろん、運行計画など運用面まで、新しい寝台列車のプランを提示します。

■水戸岡さんから一言
 かつて鉄道の中では、見知らぬ人と対話がありました。「学生さんですか?」「ええ、帰省するところなんです」と始まるような会話を、ごく普通に交わしていました。自分の環境や生い立ちを話したり、旅先の情報交換が行われたりと、鉄道の旅は豊かなコミュニケーションの場だったのです。
今はそれがなくなって、ただ自分の楽しみ、癒しの旅になっていますが、社会的に必要な公共空間としての鉄道車両を探っていきましょう。

寝台列車創生計画&水戸岡プランについて

この企画はJR各社とは関係ありません。
内容その他について、JRに問い合わせされることは、各社のご迷惑になりますのでご遠慮ください。



JR 九州の車両デザインをトータルに手がけている水戸岡鋭治さん(ドーンデザイン研究所代表)が寝台列車創生計画に参画。その独創的なアイデアで近年は岡山電気軌道や和歌山電鐵などのローカル鉄道再生にも活躍の場を広げる水戸岡さんが、寝台列車かくあるべしというプランを立案していきます。

その一部始終をブログというかたちで毎週速報。車両外観はもちろん、車内設備や内装、運行計画、アメニティグッズ、乗務員ユニフォームに至るまで、発想の段階からラフスケッチ、そして最終デザインへとプランができあがって行く過程をつぶさに追跡します。

水戸岡さんの一貫したデザインポリシーについては著書や各種メディアのインタビュー記事などでたびたび紹介され、「つばめ」や「ゆふいんの森」といった個性あふれる車両たちがどのように生まれてきたのかも広く知られているところです。しかしプランのスタート、即ち白紙の状態からデザイン完成までをリアルタイムに追いかける企画は例のない試みであり、鉄道ファンのみならずデザインを志す人にとっても興味深く見逃せない展開になることでしょう。

ここで創造されるプランは、ただちに実際の鉄道会社が採用するというわけではありません。しかし「実現できる」ことを前提としたリアリティは追い求めます。これは単なる夢物語の構想ではなく、寝台列車に未来を見出すための「提言」なのです。

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